私的感想:本/映画

映画や本の感想の個人的備忘録。ネタばれあり。

「中国の植物学者の娘たち」

2008-01-27 16:53:35 | 映画(た行)

2005年度作品。カナダ=フランス映画。
孤児院で育ったミンは湖の孤島にある植物園に実習生として赴く。そこには封建的な植物学者の教授とその娘のアンがいた。ミンとアンはすぐに仲良くなり、やがて恋愛関係へと発展する。
監督は「小さな中国のお針子」のダイ・シージエ。
出演はミレーヌ・ジャンパノワ。「かちこみ!ドラゴン・タイガー・ゲート」のリー・シャオラン ら。


映像の美しい映画だ。
大自然の山々に植物園の植物、土のにおいの漂ってきそうな自然の映像は詩情にあふれ、女性二人の撮り方は耽美的で美しい。特に湯気の使い方は幻想的で、裸が出てくるとかそういうのとは関係なしに、映像の中に色気があったと思う。

ストーリーは同性愛という設定を除けば普通のラブストーリーだ。
二人に困難が襲い、それを乗り越えることで二人の距離がさらに縮まるという点はよくあるパターンだ。二人の関係は壊れることが前提であるが、その予感の構図もそんなに珍しいものではない。
しかし見せ方と感情描写が上手いためか、二人の関係にやきもきし、ハラハラし、心を打たれるものがある。見事な構成である。

ところで二人が恋愛関係になったのには、閉鎖された空間で、抑圧する存在(父)がいたことが大きい、と思う。それによって孤独を覚えた二人が互いの存在を求め合ったのだ。
見ようによっては、それはある種の逃避である。
しかしどこまでもそのような関係で逃げるわけにもいかない。それは既に壊れることが前提の関係だからだ。
だからラストでああいう展開になるのはわからなくはない。

しかし個人的な趣味から言うと、あの展開はなしだ。
中国の裁判のひどさはともかくとしても、あのようなオチに持っていくのは気に入らない。しかもそこから湖でのシーンに向かうとあってはがっくり来てしまう。
別にハッピーエンドであろうが、バッドエンドであろうが、かまわない。だが、あんな二人だけの世界で完結するようなオチでまとめてほしくはなかった。
ラスト以外は完璧だっただけに、惜しい限りだ。

しかし点数はラスト以外がすばらしかったので、それに敬意を表し、★5を付ける。

評価:★★★★★(満点は★★★★★)

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